あなたの中の神が言った

エルシャダイパロの古キョンだが大丈夫か?
神=ハルヒ、イーノック=キョン、ルシフェル=古泉、アザゼル=朝倉みたいな感じだが大丈夫か?
特にギャグはないが大丈夫か?

以上に「大丈夫だ、問題ない」と回答できる人向けです。








1



『その装備で大丈夫ですか?』
「これはお前が用意した鎧だろうが。大丈夫じゃなさそうに見えるなら、最初からお前が用意できるうちで一番いいのをよこせ。ただし素人同然の俺の体力で着て動けるやつ限定な」
『注文が多いですねえ』
「どんな頑丈な鎧だろうと重さに潰れて動けなくなったら意味ないだろ。だいたい、俺はさっきから言ってるように戦いに関しては素人なんだから、大丈夫かどうかなんて分からん。お前の見立てで心配に見える装備なら変えるし、そうでないなら着替えるのは面倒くさい。それだけだ」
 俺のすぐそばで、涼やかな声が、喉の奥をならすように苦笑する。まるで耳元で笑われているようで落ち着かない。
『念には念をというでしょう?地上に逃れた堕天使たちは天界の技術を根こそぎ持ち出しているんです。それに対してあなたは単騎で臨むんだ、準備は慎重すぎるくらいでちょうどいい』
「なら、いっそ装甲じゃなくてお前自身を貸し出せ。人間の俺より、天使が出張った方が断然早いだろ」
『おやおや、あなたは本当に人の話を聞きませんね。今回の件に天使が直接関与することは禁じられました。天使対元天使の戦いは地上に出る影響が大きすぎますしね。言ったでしょう?』
「ああ言えばこう言うな。天使はイヤミも通じんのかこのタコ」
『ははは、海棲生物になった覚えはあいにくと』
「しかも冗談のセンスもねえ……」
 また、喉の奥をならすような苦笑が、すぐそばで聞こえた。
 ……ったく、声はすれど姿は見えずで、声だけが直接聞こえるもんだから、落ち着かない。
 俺たちが少しも笑いをとれない漫才を続けているこの場所は、天上から地上に向かって降り続ける石造り(と言っても地上では見たことのない材質だ。金属のようでもあり、石のようでもある)の『牢獄』の上だった。
 まあ俺たちとは言っても、この『牢獄』に立っているのは俺だけなんだが。
 神が作ったこの『牢獄』は、まるで手のような形をしている。大きな手のひら状の踊り場(ちょっとした広場か?)があり、それを囲むように7本の『指』がついていた。
 その指先こそが牢獄本体だ。そこに、7人の天使団――元天使団、現堕天使団の魂を閉じ込めないといけない。
 神の隙を突いて逃げ出した天使たちを、『神の手の中』に取り戻す、それが俺の仕事というわけだ。
 と、いうのが、さっきから俺の耳元でしゃべっている声――古泉の説明だった。





 それは、人の使う言語が分かれるよりも前の時代。
 天と人間の距離は遠くて近く、人間は神と天を心に仰ぎながら暮らし、天は天使たちを送り込んで地上を監視し、必要があれば啓示や奇跡を与えた。
 だが、その地上を監視する任務を続けていた天使たちは、人間の持つ特質に憧れるようになり、あるとき堕天して、人間に転生してしまった。はた迷惑なことに、天界の知識・技術を持ち逃げして。
 この技術が人間たちの間に流出したおかげで、人間たちも悪知恵をつけ、地上には今や、悪徳がはびこり始めていた。
 これを知った神様はもちろん大激怒だ。自分が出し抜かれたことを大いに悔しがったし、天使たちの反逆を自分への挑戦と取った。
 そして天界の意思決定機関であるエルダー評議会は、地上を洪水で流してきれいサッパリさせちまう計画を提出した。
 洪水できれいサッパリ。地上の生き物すべてきれいサッパリ殺すということだ。
 議員全員が積極的に推進したわけではないが、ほとんどがそれもやむなし、という空気の中、これに異議を唱えた男が一人。
 何の因果か人の身で神に気に入られて、天界で評議会の書記官をやるハメになった、つまり、俺だ。
 曲がりなりにも地上は俺の故郷であり、家族もいれば友人もいる。世話になった人だってそれなりにいる。それをきれいサッパリとは何事だ。そんな計画についての話し合いをおとなしく記録なんかしていられず、俺は立ち上がって言ったのだ。
「待った、ちょっと無茶が過ぎます!地上は俺の故郷だぞ?家族も友人も世話になった人もいるんだ」
「はあ?……ああ、いくらなんでもあんたの身内くらいだったら助けてあげるわよ」
 俺の異議に、怒髪天つく勢いのわりに気前よくそう応じたのは、俺を天に召し上げた張本人、神様だった。
「ほほーう?ならついでで助命願えるか?俺や俺の家族の友人の家族。世話になった人たちの家族。その友人たち。その友人の家族たち。その友人の友人たち。その友人たちの家族たちの友人たち。そのまた友人たち。そのまた友人の家族たち。そのまた」
「……ちょっと!その調子でいったら切りがないわよ。だいたい、地上がめちゃくちゃになる前にリセットしようって計画なのにそんなにたくさん……」
「切りがなくても俺の身内なら助けてくれるんだろう?お前が言ったんだぞ」
「バカキョン!ものには限度ってものがあるでしょうが!」
「お前こそ馬鹿野郎!切りがないくらいの連中を見殺しにして近しい奴だけで生き残ったって寝覚めが悪いに決まってるだろ!」
 神に対してなんて言いぐさだとお思いだろうが、これが俺たちの会話の標準だ。神は一体俺の何がそんなに気に入ったんだろうね。けっこうさばけた性格してるから、遠慮ない口を利きあえる奴が欲しかったのかもしれん。
「……ふうん」
 神様はそう言うと急に黙り込み。静かに俺の目を見据えてきた。見つめるとか可愛らしいもんじゃない。それこそ穴があくほどこっちを見ながら、
「あんた、つまり身内を……人類全部を助命してほしいのね?」
 そう言って、また黙ってまっすぐに俺を見る。しばらくそうした後、おもむろに口を開いた。
「……いいわよ。あたしが出す条件を呑むなら、考えても」
「……その条件ってのは?」
「堕天使たちの魂を天界に連れ戻すこと。あいつら全員捕まえてあたしの前に引っ立ててきたら、地上全体だろうと宇宙全体だろうとどーんと助命してやるわ。……どう?」
 神の目が、いつのまにかきらきらと輝きだしていた。まるで天の河でも詰め込んだように。
 俺はそれを見据え、うなずく。
「……それしか方法がないなら、仕方ないな」
 思えばこれが、俺の運命を決めちまったのだ。
「というわけよ。……議長!それで文句ないわね?」
 神の威勢のいい声に、眼鏡をかけた黒髪の議長が応じる。
「主の御心のままに。……ふん、どうせ我々が反対したところで勝手に執行する気だろう。まあ、その条件なら私個人としては不服はない。ノウハウの発信源になっている堕天使どもを地上から取り除けば、状況はいくらか改善するだろうからな。その後でさらに手入れは必要になるだろうが……まあ、好きにしたまえ」
「ふふん、そうこなくっちゃね!」
 この議長も、けっこう神のお気に入りだ。神は自分にぞんざいな口を利かれるのが好きなのかと疑いたくなるが、もちろんそうじゃない。変にへりくだられるのが嫌いなだけだ。議長とは喧嘩するほど仲がいいという感じだが、いつも呼吸が合っている。
「洪水計画の審議は一時ストップとする。彼が主の出した条件をクリアできたら、計画は全面撤回。これでどうだ?」
 議長のその声を皮切りに侃々諤々と話し合いを始めた評議員たちは、結局最終的には「異議なし」の結論に落ち着いた。




 こうして――神は言った。人類(すべて)を救え、と。




 そういった経緯で俺は久方ぶりに地上へ戻ることになったわけだ。
 堕天して人の体を得た天使たちを肉体から引きはがし、魂を『牢獄』につなぐ。それを俺一人でやることを条件に、地上は助かる。
 ……やれやれ、普通の家に生まれ育って普通に働き、天界でも慎ましく書記官やってたただけの俺に、ずいぶん壮大なお題を回してくれたもんだ。……故郷の両親や妹に顔くらいは見せてやりたいが、多分そんな暇もないだろうな。
「あんたがやるって言ったんだから当然でしょ!……まあサポートはつけてあげるからさ。必要な物資とか、彼を通じて提供するから」
 そう言ってハルヒがよこしたのが、俺の旅路を祝福し守護するという天使、古泉だった。
 普段は姿が見えず、声だけで案内してくれる。というか何かにつけてあれやこれやと解説してくれるのだが、いちいち話が長いしくどいし聞く気にならん。


『おやおや、僕の話は聞いておいた方がいいですよ。あなたが捕らえるべき堕天使たちについての情報も、堕天使たちが持ち出した技術についての知識と対策も、僕はすべて把握しています』
「はいはい分かった。必要になったら教えてくれ」
『ほら、歩く方向がずれてきていますよ。1時の方向に修正してください』
「分かったっつうの」
『さて、本当でしょうか?あなたが僕のナビをちゃんと聞いてくださらないと、いつまでたっても任務は達成できないのですが』
「だーかーら、分かってるって言ってるだろ!」
 俺の声が、だだっ広い雪原に響き、そして雪に吸い込まれて消えていく。
 今歩いてるのは見渡すかぎりど雪しかないような場所で、これといった目印がない。そのうえ運の悪いことに日も出ていないから、ちょっとしたことで方向を見失ってしまう。
 古泉の案内がなけりゃ、確かにあっという間に迷子になってのたれ死にしそうだ。
 だいたいそれ以前に、古泉が貸し出してくれた鎧がなければとっくに凍死してるに違いない。
 この鎧は隙間が多そうに見えて、えらく防御が堅くて、しかも寒さからもほぼ完璧に守ってくれている。どういうわけか素肌に直に身につけないといけないらしくて最初は落ち着かなかったが。
 古泉はこの鎧の仕組みを力場がどうとか言ってたが、もちろん俺に分かるはずがない。天界の技術で作られたものは、人間には理解できないような不思議なからくりでできたものが多いのだ。
 とにかくそんな感じで古泉の守護あって俺が旅を続けられているのは分かっているのだが。
「お前の口うるさい声がすぐ耳元で聞こえるから落ち着いて歩けないんだよ。ちょっと黙っててくれ」
 涼やかなくせに、変に甘ったるい声が、くす、と笑う。
『あなたがなかなか僕の話を聞いてくださらないから、よく聞こえるようにと耳元でささやいてみているのですが」
「嫌がらせか。嫌がらせなのか」
 人間に嫌がらせする神の使いなんて始めて聞いたぞ。
『おや、とんでもない。……神はあなたに期待しています。そんなあなたに嫌がらせなど』
 笑い声が、うさんくさい。くそ、だから声が近い。


『……あなた、条件付きとは言え、なぜ神がああも簡単に人類の助命を承諾したとお思いですか?』
「……」
『本心から人類を滅ぼしたかったわけではないからです。……天界の知識と技術を、今の人の子らは使いこなすことが出来ない。結果を考えず争いと過ぎた開墾に使い、多くを殺し、海も大地も空すらも汚すでしょう。地上に生きる他の生き物も巻き込んで、自滅してしまう危険すらある。なら、早い段階で一度リセットした方が傷が浅くて済む』
 真っ白い雪原を一心ににらみつけながら、俺はひたすら足を動かした。
『それでもなお、神は人の子らにどうにかしてやり直す機会を与えたいとお思いだったたのです。……そんな時に、あなたが名乗りを上げた』
 古泉が、また、くす、と笑う。自分の眉間にぐっとしわが寄るのが分かる。
『人の子が大いなる試練を乗り越えた褒美として、人の子ら全体に救いを与える、この形ならば、けじめがつく。地上を洪水で流してしまうべきと強硬に主張していた者も、一応の納得を示さざるを得ません』
 ……分かってるさ。神様がちょっとダメになったら即殺してしまえ、なんて短絡的な奴じゃないのは俺だって知ってる。
『ですから、あなたにはぜひ成功していただかなければいけないのですよ。どうか堕天使たちのように、神を裏切ることのありませんよう』
「……おまえなあ!」
 まるで他人事みたいに!とか、俺は別に神様のために堕天使を捕らえに行くわけじゃない!とか、俺が迷惑を被ってる相手と一緒にするな!とか、言いたいことが頭をよぎりすぎて結局言葉にならず、俺はいないと分かっていて声の元を振り仰いだ。
 ……ら、すぐ目の前に。微笑む白皙の青年の顔があった。薄い色の前髪が柔らかくかかる切れ長の目が、すぐそばにあって、長いまつげが、っておい!
「近すぎる!いきなり出てくるな!」
 俺は慌てて飛び退いた。そう、すぐ目の前に古泉の姿があった。
 そして、予想通り周囲が闇に包まれているのを知る。
 古泉が姿を現すときはいつもこうだ。周囲の風景が暗くあせて固まり、そこに古泉が忽然と姿を現すのだ。これは古泉の能力で、一時的に時を止めているのだと教えられた。最初にこうなったときは何が起こったか分からずビビったもんだ。
 天使は今回の件で地上に直接干渉するのを禁じられたので、干渉しないように時を止めた世界の中だけに現れるというわけだ。「古泉ポーズとでもお呼びください」というのはこいつ流の笑いどころが分からない冗談に違いない。
 くすくすと、俺の様子など意に介さずに古泉は笑う。
 前髪は長めだが、襟足で短く切られた後ろ髪といい、ほとんど装飾らしい装飾のない動きやすそうな服といい、俺が昔天界に上がる前に想像していた天使とは、色々な意味で違う。天使らしいところがあるとしたら、そのやたらときれいな顔立ちと丁寧なしゃべり口くらいなものだ。
「ああ、すみません。そろそろ標的が近づいてきたものですから。お知らせしようかと。……必要になったら教えてくれ、と仰ったでしょう?」
「言ったは言ったがなあ、ポーズかけるときは予告してからにしてくれよ!」
「これは失礼。……ま、それはともかく。これから遭遇する堕天使について、情報を。名前は朝倉。……あなたならば、知っているのでは?」
「……まあな。顔見知りではあった」
 少々縁あって、言葉を交わしたことはある。だが、その程度だぞ。
「彼女は、天使団のリーダーの片腕を務めていた実力者です。特に油断なさらぬよう」
「……俺が油断して失敗すれば、神様が失望するからな」
 つい言葉尻を捉えるようにつぶやくと、古泉はおもしろがるように眉尻を上げた。
「おや。ひょっとして、先ほどの話、怒っているんですか?」
「別に。……その場にいるのは朝倉だけなのか?今の手持ちの武器で通用するんだろうな」
「……周囲に使い魔は配置していないようです。ええ、そうですね、武器はそのままでも大丈夫です」
 古泉は相変わらずの笑顔で俺の質問に答える。
「ただし、体術は彼女の方が遙かに上でしょうから、無理に正面突破を試みないことです。向こうの武器は当然、あなたの鎧の防御も突破できる力を持っていますから」
「まずは隙を見つけなきゃならんってことか。……ちっ、まあしょうがない」
「ええ。健闘を祈りますよ」
 ぱちん、と、古泉が指を鳴らす。それを合図に、周囲に色が戻ってきた。




(古泉の野郎は、俺が怒ろうが何をしようが、あの調子だ。俺の旅の道連れのくせに)

(でもそれは当たり前のことだ。あいつの目的はあくまで神の命令を遂行することなんだ)

(俺と目的を同じくしてるわけじゃないんだ)

(だから地上がどうなろうが、)

(俺が失敗しようがのたれ死のうが、)

(あいつは、)




 気がつくと、雪原の向こう、白に埋め尽くされた中に、ぽつんとまったく違う色があった。そう、人が立っていた。
 俺はそいつを正面に見据えながら、手に持った武器、アーチの刃を出現させながら、近づく。
 やがて、より輪郭がはっきり見えてきた。奇妙な衣装……いや違う、鎧を纏っていた。あれも天界の鎧だ。
 ああいう感じの鎧を、見たことがある。あの鎧を纏っている奴も。
 やがて、すぐそばまでたどり着いたとき、その人影が俺に声を掛けてきた。
「久しぶりね」
 女の声。聞き覚えがある。
「やっぱり朝倉か……」
 俺が見知った天使、いや、今や堕天使となった朝倉だ。
「あなたが私たちを討伐することになって地上に降りてきたっていうのは知ってたんだけど……残念だわ。せっかくの再会が今生の別れになるなんてね」
「そうだな、お前が捕らえられるにしろ、俺が返り討ちにされるにしろ、まあ二度と会う機会はないだろうよ」
「ふふ、そこで『お前が捕らえられる』って言い切らないところがあなたらしいなあ」
「どう頑張ったところで俺は普段はしがない書記だからな」
 はったりもホラも俺の得意分野じゃねえんだよ。だが相応の努力はするつもりさ。でないと俺の目的は達成できないわけだからな。


「なあ、朝倉……お前は、なんで堕天したんだ?」
 朝倉のことは、まったく知らないわけじゃない。天使だった頃を多少は知っている。
 お前はまあ見た目も頭も性格も悪くないし、天使としての仕事も熱心だったじゃないか。わざわざ道を外れたわけが分からん。
「そうね、教えてあげてもいいけど……代わりに、」
 朝倉はうつむき、手を後ろで組んだ。
『来ます。避けて。9時の方向に』
「死んで」
「……のわっ!」
 後ろ手に掴んだアーチの刃を引き出しながら、ノーモーションで突進してきた朝倉を、すんでの所でかわして俺は雪の上に転がった。肝が冷えた。古泉の声が一瞬早かったおかげだ。
「おま!話の途中に!卑怯だぞ」
 雪まみれになりながら慌てて立ち上がり、走る。俺が転がってる間に朝倉が方向転換し、またこっちに狙いをつけてきたからだ。
「卑怯もへったくれもないわ。私たち、敵同士よ。敵と相対してるのに油断する方がいけないの。正々堂々、なんて守ってたら勝負に勝てないわよ?」
 朝倉が身を翻し、刃が踊る。俺もアーチでなんとか捌くが、正直いっぱいいっぱいだ。それどころか微妙に捌きそこねた分を、そのたびに古泉のナビでなんとか逃げたり体勢を立て直すような状態だ。
「人間の間にそういう理屈を広めて、おかげで人はどんどん争いを始めるようになってる。俺の故郷を、荒らすなよ!」
『乗せられないで。勝負に集中してください。8時方向に下がって』
「ふふ、勝負に勝つための知恵よ」
 がん、と真正面からぶつけられたアーチの刃をこちらもアーチで受け止める。が、このまま正面から切り結んでいても、正直力で押し負けそうだ。
 ……女相手に情けないとお思いだろうが、相手はおそらく天界の技術で戦闘能力を強化しているのだ。
「そう、知恵。私たちから知恵を吸収した人の子たちは、どんどん進歩を始めたわ。中には、私たちが教えたことを元に創意工夫を重ねて、私たちが思いも寄らなかったような新しい知恵を生み出し始めた人の子までいる」
 なんとか切り結んだ状態から抜け出して、もう一度、武器を構え直す。そして、一合。もう一合。
「それは進化よ。この素晴らしさが分かるでしょう?生まれたての赤ん坊がはいはいを始め、やがてつかまり立ちし、よちよち歩きを始める、そしていつの間にか、親でも思わぬことが出来るようになっていく。それを見て喜ばない人の子がいるかしら?私は人の子らの成長を促したいの。そして人の子の間でその先を見てみたい。神はなぜそれを分かってくれないのかしら」
 エネルギーの刃と刃がぶつかり合ってはぜる。その甲高い音だけが、雪原に響く。いつの間にか、雪が降り始めていた。
「……大馬鹿野郎!……あいつが、どんな思いで俺をここに送り込んだと!」
『いけない!避けて!』
 目の前に、朝倉が突き出す切っ先が、迫る。
「……!」




(俺がこの旅の途中で死んだら。古泉は何か感じてくれるだろうか)

(……「神の期待を裏切った人間だ」と失望して、それきりかもしれない)

(俺のことも、地上の命運も、どうでもいいかもしれない)

(俺は、それがたぶん、悔しい。悲しい。怖い。)






To Be Continued...(終わらない旅が始まった)